代表取締役社長
岩下 節生

2024年6月期の事業実績

顧客の設備投資の回復・拡大により2024年6月期の業績は計画を大幅に上回り、 売上高、売上総利益率ともに上場来最高水準となりました

 

当社グループを取り巻く2024年6月期の事業環境は、まず、 半導体業界では、生成AI等への期待を背景とした半導体需要 拡大が見込まれたことに加え、地政学的リスク等への対応として世界各地で半導体工場の新増設が進められました。次に、エ レクトロニクス業界では、グリーンエネルギー政策等に基づく EV導入促進政策の継続的進展等に伴うパワーデバイスや各種電 子デバイスの技術革新や増産のための投資拡大とともに、中国においては、エレクトロニクスの国産化政策に基づく投資も継続しました。そして、フラットパネルディスプレイ(FPD)業界 では、ITパネルが液晶から有機ELへ転換する過渡期にあり、大 型基板の有機EL投資が期待されました。また、産業用電池業 界においてもEVバッテリーの小型大容量化および安全性の向上 等による量産投資の本格化の兆候が引き続き認められました。

 

このような事業環境下において、当社グループの2024年6月 期の事業成績は、受注高、売上高及び、営業利益ならびに経 常利益とも計画を大幅に上回りました。

 

2024年6月期の受注高については、当社グループが成長ドラ イバーと位置付ける先端ロジック・メモリが2024年6月期の下 期より回復に向かい、パワーデバイスやEVバッテリーの受注も 増加しました。また、コンポーネントや材料関連の受注が増加 したこと等により、前期実績を110億円上回る2,582億円(前期 比4.4%増)となり、売上高は当社上場来最高水準の2,611億円 (同14.8%増)となりました。

 

当社グループの2024年6月期の利益面については、売上高の 増加に加え利益率の高い製品の売上割合が増加したため、売 上総利益率は前期の29.5%から上場来最高水準となる30.9% へ上昇し、営業利益率は前期の8.8%から11.4%へと大きく改善しました。その結果、営業利益298億円(前期比49.3%増)、 経常利益298億円(同30.2%増)、親会社株主に帰属する当期 純利益202億円(同42.8%増)となり、ROEも前期の7.3%か ら9.7%へ上昇しました。

3年間の中期経営計画の目標達成への取組み

当社グループでは、「真空技術をコアとしたイノベーションの 創出・共創の推進」「多様な人財の育成と活躍推進・レジリエ ントな組織づくり」「バリューチェーンにおける人権尊重・責任ある行動」「持続可能な地球環境への貢献」という当社グループ が取組むべき重要課題(マテリアリティ)を策定しています。そ して、このマテリアリティに取組むため、2024年6月期を初年 度とする3年間の中期経営計画では、「真空技術による社会的価 値創造」と「利益・資本効率重視の経営」を基本方針とし、重 点戦略として、「成長事業における製品競争力の強化」「グロー バル生産性の向上」「経営基盤の強化」を定めました。その上で、 当該中期経営計画の最終年度である2026年6月期の当社グ ループの業績目標を、「売上高3,000億円」「売上総利益率35%」 「営業利益480億円(営業利益率16%)」「営業キャッシュ・フロー (3年間累計)630億円」「ROE14%」としています。

 

中期経営計画の初年度である2024年6月期の実績は、前述 の通り単年度計画を大幅に上回る業績となりました。引き続き、 中期経営計画の業績目標達成を目指し、特に、「モノづくり力 強化」の施策として製品企画力と戦略購買力を更に強化することにより、計画的生産体制をより拡充させることで生産性向上 に繋げ、売上総利益率の更なる改善を目指します。

 

なお、成長ドライバーを取り巻く環境と当社グループの取組 みについては、まず、メモリ・ロジックに関しては、顧客の投 資は回復傾向にあり、当社では未参入の工程への参入等により、 着実な成長を目指します。次に、各種電子デバイスに関しては、 パッケージングやμOLED(マイクロ有機ELディスプレイ)等へ の顧客の投資継続が見込まれます。更に、パワーデバイスに関 しては、足元ではEV市場の成長が鈍化の影響をうけてSiC(シ リコンカーバイド)ウエハの8インチ化への顧客の本格投資が 遅れていますが、当社装置の市場シェアが未だ低い地域への拡 販を強化し、売上増加を目指します。そして、バッテリーに関し ては、EVバッテリーの新たな集電体材料への顧客の投資が 2026年6月期以降に本格化する見込みであり、正極集電体として使用されるアルミ両面蒸着膜のフィルム幅の拡張による生産 性向上や、負極集電体として使用される銅両面蒸着膜への置き 換えへ対応により、市場シェアの増加を推進していきます。

 

2026年6月期には、これらの成長ドライバー全体で2023年 6月期比1.5倍の受注高を目指します。

2025年6月期の業績の見通し

中期経営計画の2年目にあたる2025年6月期の単年度目標は、「受注高2,700億円(前期比4.6%増)」「売上高2,750億円(同5.3%増)」「営業利益345億円(同15. 9%増)」「経常利益350 億円(同17.5%増)」「親会社株主に帰属する当期純利益230億 円(同13.7%増)」と、更なる増収増益を目指すものとしていま す。また、「売上総利益率32.4%」「営業利益率12.5%」「ROE 10.1%」も目標値としております。

 

当社グループを取り巻く事業環境に一部不透明感はあります が、メモリ・ロジックへの顧客の投資の回復やITパネル用有機 EL投資の本格化等の機会を捉え、更なる受注増加に努めてまいります。また、有機EL向けの蒸着装置では、当社グループの 製品であるクライオポンプが広く採用されており、このクライオ ポンプの売上増加にも努めてまいります。そして、幅広い用途 にカスタマイズ可能なリークテスト装置やニーズが拡大している 表面分析装置等の拡販にも積極的に取組んでまいります。

 

2025年6月期の売上高については、これらの市場動向に加 え、当社グループの前期末受注残高も1,450億円であることか ら、上記の単年度目標は達成できるものと見込んでおります。 また、利益面についても、収益性が高い半導体及び電子部品 製造装置の売上比率増加による利益率改善の効果が期待でき ます。それと同時に、成長ドライバー等の更なる強化を図るべく、2025年6月期は研究開発設備投資として105億円、研究開 発費として140億円、合計245億円の投資を予定しています。

 

中期経営計画の目標達成に向けて、重点戦略に着実に取組 みつつ、持続的な成長を目指します。

株主の皆様にお伝えしたいこと

当社は、成長領域への十分な研究開発投資資金を確保する とともに、安定的財務基盤を構築し維持する必要があります。 一方で、株主の皆様への利益配分も重要な政策の一つと考えて おります。そこで、2024年6月期より、連結配当性向を更に引き上げて35%以上を目途とすることとし、株主の皆様への 2024年6月期の期末配当は、前期比35円増配の1株当たり 144円としております。引き続き、当社は株主の皆様への還元 に努め、2025年6月期の期末配当は、1株当たり164円を予定 しています。

 

当社グループは、真空技術及びその周辺技術の総合利用により、経済価値、社会価値、環境価値を創造し、企業価値を向上してまいりますので、株主の皆様におかれましては、より一層のご理解とご支援を賜りたくお願い申し上げます。当社グループは一丸となって、中期経営計画の最終年度の業 績目標の達成を目指し、引き続き企業価値を向上してまいりますので、株主の皆様におかれましては、より一層のご理解とご支援を賜りたくお願い申し上げます。

 

 

2024年9月