代表取締役社長
岩下 節生

2025年6月期の事業実績

投資減速の影響を受けながらも、受注残高が寄与し、売上高は2,500億円を超える水準を達成しました

 

当連結会計年度の事業環境を見ますと、半導体業界では、生成AI活用の浸透などを背景に中長期的な需要拡大が見込まれるとともに、地政学的リスクの高まりへの対応として、世界各地で半導体工場の新増設計画が進んでいます。エレクトロニクス業界では、パワーデバイスがEV需要の鈍化を受け、短期的に設備投資が調整されながらも、各種電子デバイスの技術革新や増産投資、中国における国産化投資などは、引き続き堅調に推移しています。フラットパネルディスプレイ(FPD)業界では、大型基板の有機ELへの投資が続いています。また、産業電池業界では、EV需要鈍化の影響が生じていますが、小型大容量化や安全性向上を目的とした量産投資が検討されている状況です。

 

そうした中で当社グループの2025年6月期連結業績は、パワーデバイスやバッテリーの投資減速を受け、半導体及び電子部品製造装置とディスプレイ・エネルギー関連製造装置の受注が減少し、期初の計画値を下回りましたが、おおむね2025年6月期第3四半期決算発表時の業績予想に沿った水準となりました。

 

受注高は2,256億円(前年度12.6%減)にとどまったものの、前年度からの受注残高が寄与し、売上高は2,512億円(同3.8%減)に達し、上場来最高値となった前年度に次ぐ高水準を維持しました。

 

利益面においては、収益性の高い半導体及び電子部品製造装置とコンポーネントの売上構成比が50%を超え、さらに高利益率の案件が寄与したことで、売上総利益率は31.8%となり、上場以来の最高水準を達成しました。営業利益率は、減収の影響に加え、今後の成長に向けた研究開発費の増加により、前年度の11.4%から10.6%に低下しました。その結果、営業利益は265億円(前年度比10.9%減)、経常利益は286億円(同4.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は167億円(同17.5%減)となりました。

 

一方、当社は株主の皆様への利益還元を重視し、安定配当を継続する観点から2025年6月期の期末配当は、期初の予定通り過去最高となる1株当たり164円としました(前年度比20円増)。

新中長期経営計画を始動

6年間の「バリューアッププラン」で事業ポートフォリオの転換を加速し、成長力と収益力を高めます

 

このたび当社グループは、3ヵ年中期経営計画(2024年6月期~2026年6月期)を見直し、2031年6月期までの6ヵ年を期間とする新中長期経営計画「バリューアッププラン」を策定し、2026年6月期より始動しました。

 

「バリューアッププラン」では、当社グループが目指す半導体・電子分野を中心とした事業ポートフォリオへの転換を加速すべく、経営資源の最適化を推し進め、成長力と収益力を高めていきます。過去数年間は、5つの成長ドライバー(バッテリー、ロジック、メモリ、各種電子デバイス、パワーデバイス)を設定して受注の強化を図り、事業拡大と収益性の改善に一定の成果を上げてきました。しかし、中国のローカル装置メーカーが急成長している状況下で競争に勝ち抜くためには、技術優位性の維持が不可欠であり、研究開発投資の継続的拡充に向けて利益率のさらなる向上が求められます。これまでの中期経営計画の延長線上では、利益の拡大に限界があり、中長期の視点に立った抜本的改革の必要性を認識しました。

 

成長戦略のポイントは、事業改革と生産改革を土台とし、半導体・電子分野へ経営資源を大胆に集中させ、事業間のシナジーを最大限に活かしながら、新たなビジネスを生み出していくことにあります。これにより今後6年間で売上高を約1,100億円引き上げ、計画最終年度の2031年6月期における業績目標として、「売上高3,600億円(うち半導体・電子関連ビジネス構成比60%以上)」「営業利益790億円(営業利益率22%)」「ROE16%」の達成を目指します。

 

最初のステップは「事業改革」です。低採算事業などの縮小や撤退、生産拠点の再構築、固定費の適正化などを2027年6月期までの2年間で着実に推進してまいります。その結果として「バリューアッププラン」の中間点となる2028年6月期には、事業売却・縮小が売上成長に影響することが想定されるものの、改革効果と半導体・電子関連ビジネスの拡大による利益改善を見込み、「売上高2,600億円」「営業利益390億円(営業利益率15%)」「ROE 10%」を想定しています。

 

もう一つのステップは「生産改革」です。半導体及び電子部品製造装置を中心に、製造リードタイムの大幅な短縮と生産体制のスリム化、調達改善・部品共通化などのメリットをもたらす「モジュラーデザイン(MD)」を推進し、利益の最大化につなげていきます。これによりMDの対象となる装置事業については、2031年6月期までに営業利益率の12ポイント改善(2025年6月期比)を目指す計画です。

 

一方、研究開発投資については、6年間で研究開発用設備投資に820億円、研究開発費に880億円、合計1,700億円を実行する方針です。さらなる成長に向けた研究開発を強化するため、半導体・電子分野へ約8割、同関連分野へ約1割、真空関連分野へ約1割を配分する予定です。

2026年6月期の見通し

受注増加と製造リードタイム短縮などの効果で高水準の売上高を維持し、利益の改善を見込んでおります

 

「バリューアッププラン」1年目の2026年6月期は、半導体関連投資の継続やパワーデバイス投資の回復傾向などを踏まえ、受注高2,500億円(2025年6月期比11.1%増)を想定しています。売上高は、受注の増加や製造リードタイムの短縮などによる効果が期待できることから、2,500億円(同0.5%減)で推移する見込みです。

 

利益面においては、半導体・電子分野の売上高増加に伴う収益性の高い製品群へのシフト効果を受け、売上総利益率は33.0%となり、営業利益率も11.4%へ上昇する見込みです。これにより、営業利益は285億円(2025年6月期比7.5%増)、経常利益は285億円(同0.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は200億円(同19.9%増)を予想しています。

 

なお当社グループは、米国関税方針による直接影響は限定的と見ていますが、半導体関連の政策が不透明な状況であることから、上述の業績予想には関税影響を織り込んでいません。

 

2026年6月期の期末配当は、1株当たり164円の継続を予定しています。引き続き業績連動配当性向35%以上を目途としつつ、株主の皆様への利益還元を重視し、長期的な増配とともに還元水準の拡充を目指しています。

株主の皆様にお伝えしたいこと

今後2年間の事業改革により、持続的な高成長・高収益性を確実に実現するための土台を築いてまいります

 

「バリューアッププラン」は、新たな成長ステージへの飛躍を目指している当社グループの意欲的なチャレンジです。2025年7月1日付で実施した組織変更では、「グロース&デベロップメント室」を新設し、「バリューアッププラン」の目標達成をサポートするとともに、欧米を含むグローバル戦略の策定及び成長施策の実行を担う体制を整えました。

 

まずは今後2年間の「事業改革」を着実に遂行することで、持続的な高成長・高収益性を実現するための土台を築き、6年後の飛躍に向けて確実に推進してまいります。

 

株主の皆様におかれましては、当社グループ事業のさらなる発展にご期待いただき、これからも長きにわたりご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 

 

2025年9月