代表取締役社長
岩下 節生

2023年6月期の振り返り

前期比で減収・減益も、半導体及び電子部品製造装置・コンポーネント等での受注高・売上高は着実に増加しました

 

当期における世界経済は、穏やかな回復基調で推移しましたが、地政学リスクの高まり等に伴う各種材料や部品の価格上昇やサプライチェーンの混乱、そして世界的な金融引き締めに伴う景気後退懸念の高まり等から、その先行きに対する不透明感が高まりました。

 

当期における当社グループを取り巻く事業環境は、半導体業界では、スマートフォンやパソコン等の需要減速に伴う短期的な半導体メーカーの設備投資の鈍化が認められるものの、中長期的には、生成AIへの期待等も相俟った半導体需要拡大が見込まれるとともに、地政学リスク対応等の観点からの世界各地での半導体工場新増設計画も進められています。また、エレクトロニクス業界では、グリーンエネルギー政策等に基づくEV導入促進政策の進展等に伴ったパワーデバイス投資、スマート社会化構想等に基づくデジタル化の促進やメタバースの実現等に向けた各種電子デバイスの技術革新や増産のための投資、中国におけるエレクトロニクス国産化政策に基づく投資等が継続的に拡大しています。そして、フラットパネルディスプレイ(FPD)業界においては、タブレットやパソコン用のITパネルが液晶から有機ELへの転換期にあり、大型基板の有機EL投資が今後増加することが期待されています。また、産業用電池業界においても、EVバッテリーの小型大容量化や安全性向上の実現に向けた量産投資が本格化しはじめています。

 

こうした環境の中、FPD製造装置については、前期のITパネル用液晶投資の活発化の反動減により、受注高、売上高ともに前期比で減少しました。しかしながら、半導体製造装置については、ロジック向け投資等により、電子部品製造装置については、パワーデバイスやオプトデバイス等の投資活発化や中国のエレクトロニクス国産化に向けた投資活発化等により、受注高、売上高ともに前期比で増加しました。さらに、コンポーネントについても半導体、電子部品及びEV用バッテリー等の製造装置や民生機器関連向けの真空ポンプ・計測機器・電源機器等が好調に推移し、受注高、売上高ともに前期比で増加しました。

 

以上により、2023年6月期の連結業績は、受注高2,472億円(前期比8.5%減)、売上高2,275億円(同5.7%減)、営業利益199億円(同33.6%減)、経常利益229億円(同28.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益142億円(同29.9%減)と、売上高の減少や先行投資となる半導体関連等の研究開発費の増加等により、前期比で減収・減益となりました。

 

 

前中期経営計画の振り返り

部品長納期化の影響等によって利益率は計画値を下回るも、成長領域における受注高は計画値を上回りました

 

前中期経営計画「Breakthrough 2022」(2021年6月期~2023年6月期)の実績については、当社グループが成長領域であるとした半導体ロジック、パワーデバイス及び各種電子デバイス等の成長ドライバーの牽引によって、2020年6月期比で受注高は1.6倍に成長しました。また、売上高についても、これらの半導体及び電子部品事業における顧客の投資の拡大によって計画値を上回りました。しかし、地政学的要因等によるサプライチェーンの混乱等を原因とする調達部品の長納期化等により、利益率については、計画値を下回る結果となりました。

 

また、前中期経営計画における具体的取組みであった「成長事業の強化」及び「研究開発力強化」については、半導体事業における新たな工程への新規参入を含む受注拡大、電子部品事業において当社グループが注力すべき主要5分野のうち、特に、パワーデバイス・オプトデバイスの受注拡大、そしてFPD事業におけるEVバッテリー用の巻取式真空蒸着装置の量産化開始といった成果を上げました。また、その他の具体的取組みであった「モノづくり力強化」及び「経営基盤の強化」については、国内外の子会社統合の実施や生産性向上に向けた各種システム整備の推進を行いました。

新中期経営計画をスタート

真空技術による社会的価値創造及び利益・資本効率重視の経営を目指します

 

当社グループは、「未来につながる『可能性の場』であり続ける」という“Vision 2032”を策定し、これに基づいてマテリアリティを定めました。この“Vision 2032”をふまえて、2024年6月期を初年度とする3年間(2024年6月期~2026年6月期)の新中期経営計画を策定しました。この新中期経営計画においては、「真空技術による社会的価値創造」及び「利益・資本効率重視の経営」という基本方針のもと、「成長事業における製品競争力の強化」、「グローバル生産性の向上」、「経営基盤の強化」を重点戦略とし、それぞれについての具体的取組みを定めました。

 

この新中期経営計画においては、まず、「成長事業における製品競争力の強化」として、半導体、電子部品及びバッテリー市場を中長期的成長が特に期待できる成長ドライバーとして捉え、これらに関係する事業分野への研究開発をさらに強化します。また、「グローバル生産性の向上」として、計画的生産の拡充やそれに資するデジタル化の推進により、当社グループにおける総合的なモノづくり力強化をさらに進め、更なるグローバル生産性の向上も目指します。そして、「経営基盤の強化」として、ESG経営の強化、財務基盤の強化・CFマネジメントの強化、人財経営の推進を進め、新中期経営計画の達成に向けた事業活動の基盤をさらに盤石のものにすることを目指します。

 

その上で、新中期経営計画における数値目標は、2026年6月期連結業績において「売上高3,000億円」「売上総利益率35%」「営業利益480億円(営業利益率16%)」「ROE14%」「営業CF(3年間累計)630億円」の達成としています。

2024年6月期の業績予想

半導体及び電子部品事業の継続的な成長により、増収・増益を予想します

 

2024年6月期の連結業績予想としては、受注高2,500億円(当期比1%増)、売上高2,450億円(同8%増)、営業利益230億円(同15%増)、経常利益245億円(同7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益160億円(同12.9%増)と、増収・増益を見込んでいます。

 

受注高については、半導体事業における先端ロジックや電子部品事業におけるパワーデバイス等において特に成長が見込まれることに加え、FPD事業におけるEVバッテリー用の巻取式真空蒸着装置の受注も期待できることから当該予測をしています。そして、この受注高の予測値に対応した計画的生産の拡充等の総合的なモノづくり力強化をはかることにより、売上高拡大とともに、売上総利益率及び営業利益率の向上を目指します。

株主の皆様にお伝えしたいこと

当社グループは、グループ一丸となって、新中期経営計画の達成を目指します。この新中期経営計画の実現への取組みは、「未来につながる『可能性の場』であり続ける」という“Vision 2032” を常に目標にしながら実施していきます。

 

当社グループは、真空技術及びその周辺技術の総合利用により、経済価値、社会価値、環境価値を創造し、企業価値を向上してまいりますので、株主の皆様におかれましては、より一層のご理解とご支援を賜りたくお願い申し上げます。

 

 

2023年9月